介護施設では、入居者の体調異変にすぐに気づいたり転倒事故などを防いだりするための「見守り」が欠かせません。しかし見守りの重要性を感じていても、具体的な方法や活用できるシステムがわからないと悩んでいる介護施設も多いのではないでしょうか。
この記事では、介護施設における見守りのポイントについて解説します。
目次
介護施設の見守りとは?
介護施設で見守りが必要な理由
ケガや転倒などの事故を防ぐため
体調の急変に備えるため
入居者が求めていることに気付けるため
ADLを向上させるため
介護施設における見守りのポイント5つ
【1】入居者ごとに見守りの目的を把握する
【2】入居者の動きを予測する
【3】職員同士で情報共有を行う
【4】急変時の対応を決めておく
【5】見守りシステムの導入もおすすめ
■介護施設の見守りとは?
介護施設における「見守り」とは、入居者が安心・安全な生活が送れるように、介護スタッフが常に寄り添い必要なサポートができる体制をとることです。
介護施設では入居者の多くが心身の病気や障害、ケガなどを抱えているため、体調の急変や、転倒・転落・誤嚥などのリスクを伴う方が大勢います。そのため介護スタッフがしっかりと入居者を見守り、体調の急変に迅速に対処することや事故リスクを低減することが求められます。
ただし利用者をずっと見張るような行為や、入居者が自力で行動しようとしているのに何でも介助することは見守りとはいえません。介護事故を防ぎつつ、入居者がどのような行動をとりたいのかを予測して必要なケアを施すことが適切な見守りにつながります。
■介護施設で見守りが必要な理由
介護施設で見守りが必要とされる理由について解説します。
ケガや転倒などの事故を防ぐため
介護施設では、転倒や転落、誤嚥などの介護事故を防ぐことが重要です。介護施設の入居者はほとんどが高齢者です。高齢になると体力や運動機能が低下するため、ちょっとした段差につまずいたりベッドから降りようとしてよろけたりして、転倒や転落するリスクが高まります。高齢者が転倒・転落してしまうと、若い頃よりもケガにつながりやすく治りにくいといった特性もあります。また摂食や嚥下機能が低下していることもあり、誤嚥につながる可能性も高まります。
高齢者の事故を防ぐためにも、介護スタッフが身の回りのリスクを防止する見守りが必要です。
体調の急変に備えるため
介護施設の入居者は病気を抱えている方も多く、体調の急変リスクにも備えなければなりません。血圧や脈拍、体温などのバイタルチェックはもちろん、いつもとは違う言動がないか観察する必要もあります。日頃から体調を把握しておき、体調変化や異常にすぐ気づけるような体制を整えたり、急変を未然に防いだりすることが大切です。
入居者が求めていることに気付けるため
見守りは入居者がどのような行動をしたいか、何をしてほしいのかに気付けるようにするためにも必要です。たとえば入居者が立ち上がろうとしたらどこに行きたいのか、夜中にベッドから出ようとしたらトイレに行きたいのかなど、求めているものを常に予測します。見守りにより先回りしたケアができれば、事故リスクの低下や入居者の安心感へとつなげられます。
ADLを向上させるため
入居者の見守りは、ADLを向上させるためにも必要です。ADLは入居者の自立した行動を促して、活動の範囲を広げることです。
入居者ができるだけ自分の力で食事や歩行、排泄、入浴などの動作が行えるように、介護スタッフが近くで安全にできるか危険がないかを見守ります。安全な環境で自立した生活動作の練習を行うことで、入居者本人の能力維持や向上させるとともに、尊厳や自尊心を守ることにもつながります。
■介護施設における見守りのポイント5つ
介護スタッフが入居者にただ付き添うだけでは見守りとはいえません。ここでは見守りする際のポイントを5つ紹介します。
【1】入居者ごとに見守りの目的を把握する
入居者ごとに異なる見守りの目的を把握することがポイントです。歩行が困難な方や誤嚥のリスクがある方、トイレの介助が必要な方など、入居者の状態は一人ひとり異なります。それに伴い必要な介助は異なるため、見守りの目的を把握しておかなければなりません。
歩行が困難な方には歩行時に転倒しないように見守り、誤嚥リスクのある方には食事の際の姿勢や口にする量を見守るなど、どの入居者のどの動作に対して見守りが必要なのかを把握することが求められます。
【2】入居者の動きを予測する
入居者の安心・安全を守るためには、行動を予測して先回りした見守りが必要です。入居者が行動してから対応していては遅い場合があります。たとえば歩行が困難な方が歩こうとしてベッドから出た後では、駆けつける前に転倒を防げない可能性があります。
そのため入居者の普段の行動をよく観察して、傾向や特徴をつかんでおくことが大切です。トイレや食事などの時間を把握しておけば入居者の動きを予測でき、先回りして必要なサポートや声かけが行えます。
【3】職員同士で情報共有を行う
介護施設では、職員同士の情報共有も欠かせません。入居者全員の動作能力や行動の傾向などのすべてを把握しておくことは困難です。また介護スタッフ一人が全員を見守れるわけではありません。たとえば歩行の介助中に、転倒リスクのある方がベッドから起き上がろうとしても、スタッフ一人では対応できません。
介護スタッフ同士で声を掛け合うことで、安心・安全な見守りが可能です。また介護スタッフだけでなく、看護師や専門職との情報交換も大切です。入居者を多角的に見守れるため、介護ケアの品質向上にもつながるでしょう。
【4】急変時の対応を決めておく
万が一の事態を想定して、あらかじめ対応方法を決めておくことも見守りにつながります。普段から見守りの体制を整えていても、介護事故や体調の急変が起こる可能性はゼロではありません。
転倒や転落事故が発生した場合は看護師や医師の判断を仰ぐためすぐに報告する、病状が急変した場合はすぐに救急要請し病院へ搬送する、といった迅速な行動が求められます。冷静に対処できるように施設内でフローを決めておき、定期的なトレーニングを行って実践に移せるようにしておくことが大切です。
【5】見守りシステムの導入もおすすめ
入居者を見守るためには、見守りにつながるシステムの導入もおすすめです。これまでの見守り手段は、介護スタッフが各居室を巡回する方法が一般的でした。しかし少子高齢化に伴い働く人口は減少しているなか、介護のニーズは上昇する一方です。これまでと同じように人の手だけでは、介護スタッフの負担が増えるばかりです。見守りシステムの導入によって業務効率化につながり、スタッフの負担軽減や介護品質の向上が期待できます。
これらのポイントを押さえたうえで、介護施設で活用できるシステムはどんなものがあるのでしょうか?次回の記事で解説いたします!