介護施設では入居者と介護スタッフをつなぐナースコールが必要不可欠です。しかし頻回なナースコールは、ほか業務の妨げになり介護スタッフの心身の負担にもつながります。今回はナースコールが頻回する理由や対策について解説します。
目次
介護施設でナースコールが頻回する理由
困りごとや介助を必要としている
不安な気持ちが強い
介護スタッフが来なかった
介護施設のナースコール頻回対策3つを紹介
1.利用者の不安を和らげる対応をする
2.利用者の行動パターンを把握、分析する
3.見守り体制を強化する
■介護施設でナースコールが頻回する理由
介護施設の入居者がなぜナースコールを頻回に鳴らすのか、その理由や原因について詳しくみてみましょう。主な理由として以下の3つが考えられます。
困りごとや介助を必要としている
ナースコールが頻回する理由のひとつとして、実際に困ったことがある場合や介助を必要としてナースコールを押しているケースがあります。
入居者のなかには、介助がないと移動できない方もいます。たとえばトイレに行きたくても行けない状況は入居者にとって非常にストレスであり、我慢しながら待たされている時間はとても長く感じられるものです。とくに病気や投薬の影響によって、水分を摂り過ぎてトイレが近くなっていたり頻尿になっていたりすることもあります。通常よりもトイレの回数が多くなっているために、結果的にナースコールが頻回になっていることが考えられます。
また個室の場合だと介護スタッフの動きが見えないため、「反応がない…」「忘れられたのかな?」と感じてナースコールが頻回になっているのかもしれません。
不安な気持ちが強い
実際に介助が必要な状況ではないけれど、不安な気持ちからナースコールを鳴らすケースもあります。
とくに施設に入居したばかりだと、「知らない人ばかりの環境で生活できるか」「家族と離れて寂しい」といった気持ちを抱え、不安な状態の方も多くいます。また明らかな原因があるわけではなく、頭痛や筋肉痛、疲れやすい、眠れないなどなんとなく体調が悪い「不定愁訴」といったケースや、持病があり「病気が悪化したらどうしよう」などと強い不安を抱いている方も少なくありません。
このような不安な気持ちから、頻回なナースコールにつながっている可能性があります。介護スタッフも可能な限り入居者の悩みに寄り添ってあげたい気持ちがあっても、業務負荷が大きくなかなか一人ひとりに時間を割けないというのが実状です。コミュニケーションが不足することで、入居者の不安な気持ちがさらに強まりナースコールを鳴らす回数が増える、という負のループに陥りやすくなります。
介護スタッフが来なかった
実際に介護が必要でナースコールを鳴らしたけれど、介護スタッフが来なかったケースが続いたために、頻回になってしまったというケースも考えられます。
介護スタッフが一人の状況でナースコールが複数鳴った場合は、入居者の状況などを考慮して順番に対応していく必要があります。複数の入居者に対応している合間に別の緊急の対応が入ってしまい、対応が遅れてしまったというケースもあるでしょう。しかし待たされている側としては待機時間が長く感じられますし、ほかの入居者は対応してもらえていることを知ってしまうと「後回しにされている」と感じます。このようなケースが続くと、ナースコールが頻回する可能性が高まってしまうのです。
■介護施設のナースコール頻回対策3つを紹介
ナースコールが頻回する理由について紹介しましたが、ここからはナースコールの回数を抑えるための対策を3つ紹介します。
1.入居者の不安を和らげる対応をする
入居者の不安な気持ちを和らげ、安心して過ごしてもらうことでナースコールの減少が期待できます。上述したように入居したばかりの方や、不定愁訴、持病を抱えている方などはとくに不安な気持ちを抱えていることがあります。
入居者の不安を和らげるためには、まずは入居者との対話を増やして悩みを聴く時間を持つことです。そして相手を否定したり話を遮ったりせずに、「大変でしたね」「悲しかったですね」などと共感を示しながら、話を最後まで聴くことが大切です。また話が途中で途切れてしまっても相手が話せるようになるまで待つことも必要です。
相手の気持ちに寄り添いながら不安や悩みを共有することで安心感につながり、不安な気持ちからナースコールを鳴らすということを低減できます。
2.入居者の行動パターンを把握、分析する
入居者の行動パターンを把握しておくことで、頻回なナースコールを防止できます。入居者の行動を把握して分析しておけば、入居者にあわせて対応がしやすくなり、人員配置や事前準備が可能となります。たとえば排泄のサポートであれば、「起床後すぐにトイレに行く」などのように、入居者ごとのスケジュールを細かく日々収集していきます。細かいスケジュールを蓄積できれば入居者ごとの行動パターンが把握でき、あらかじめ必要な物を用意してあげたり声をかけたりと、入居者のニーズに応えられるようになります。
ここで大切なことは、介護スタッフの都合やマニュアルに従った行動に合わせようとしないことです。あくまで入居者の生活リズムを優先して、できる限り合わせてあげることが大切です。
介護スタッフにとっても作業効率が増し、入居者にとっても「よく気づいてくれる・わかってくれている」と感じて不安な気持ちが解消されるので、ナースコールの頻回を抑えることが期待できます。
3.見守り体制を強化する
入居者に、日々の介護サポートをしっかり受けられているという安心感を持ってもらうことも、ナースコールの頻回を抑制することに繋がるでしょう。
例えば見守り体制の強化として居室映像を確認できるツールの導入が有効です。呼出があった際、入居者の様子をリアルタイムで確認することで居室に駆け付ける前の緊急度把握が可能となります。さらに通話機能があると入居者にとってはスタッフとの繋がりを感じられ精神的な安心感を与えることもできるでしょう。
また遠隔で居室の様子が分かるようなツールがあれば、特に人員配置が難しいとされる夜勤時の業務負担が軽減され居室の見守りを適切な優先度で実施することができます。
このような見守り体制を構築できれば、「様子が分からないからとりえず駆け付ける」という負担をなくし、見守りの優先度を把握し、必要なときに素早い対応が可能になります。
次週は、ナースコールの頻回によってイライラしたときの対処法や、頻回を防ぐことができるおすすめのツールをご紹介します。
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