【介護事業者向け】ICT/介護ロボットの補助金について

介護経営

2024.06.24

令和6年度の制度改正では「生産性向上」「ICT利活用」を中心とした取組が求められており、各種加算、各自治体が推進する生産性向上支援事業にも色濃く反映されています。

多くの介護事業者様が「ICT/介護ロボット」購入の原資として期待される各種補助金について解説していきます。

 

介護施設の生産性向上の取組について

まず、令和6年度の制度改正の骨子である「生産性向上の取組」について説明します。

処遇改善加算については、旧3加算(処遇改善/特定処遇改善加算/ベースアップ等支援加算)が一本化され、「新処遇改善加算」として令和6年6月よりスタートしました。
処遇改善加算取得要件として、「職場環境等要件」の中に「業務改善のための生産性向上の取組」の項目があり、本年度は算定要件が従前と変わりませんが、令和7年度からは取組要件が厳しくなることが公示されています。
取組を推進するために「委員会の設置」「ICT/介護ロボットの機器選定」「機器購入の原資確保」に多くの介護事業者様が悩まれているのではないでしょうか。

また、ICT/介護ロボット関連の加算として「生産性向上推進体制加算」が新設されました。
特に加算(Ⅰ)については、「全床の見守り機器導入」「全職員のインカム使用」などが要件となっており、取得可能な加算金額と比較して初期導入コストとのバランスが懸念されています。機器導入を後押しするための、適切な補助金の支援を望みたいところです。

科学的介護(LIFE)については、新システム刷新が予定されており、よりデータ利活用が可能となる「フィードバック票」について期待されています。こちらも介護記録ソフトのCSV出力機能を活用したデータ提出が主流となっており、ICT機器の活用が必須となっています。

「生産性向上の取組」を推進するために、各自治体での取組も始まっています。
ICT/介護ロボットのみならず、人材定着や各種課題を「ワンストップ」で対応する組織体制として、「介護生産性向上総合相談センター(※)」の開設がすすんでいます。
一例として「個別相談支援」「伴走支援」「研修及びセミナー開催」「介護ロボット機器貸出事業」などを行うことで、介護事業者様の生産性向上の取組を後方支援する枠組みとなっています。

 

上記のような背景より、生産性向上の取組を加速するために必要な「補助金」について、解説していきます。
※事業主体により、名称は異なる場合があります。また実際の支援メニューも自治体ごとに異なります。

IT導入補助金とは?

IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者等の労働生産性向上を目的して、業務効率化やDX等に向けたITツールの導入を支援する補助金です。
補助対象者の要件として「資本金」「常勤の従業員数」などの縛りがあります。
補助対象としては「ITツールで事業をデジタル化」する目的として、「パソコン、タブレット」などの機器類、ソフトウェアのクラウド利用料など幅広く申請が可能です。

ただ補助額があまり高くない点、補助対象者が介護分野に限らず、全業種にわたることから、採択率が決して高くないといった実態があります。
詳細は「IT導入補助金2024ポータルサイト」にてご確認ください。
https://it-shien.smrj.go.jp/

介護テクノロジー導入支援事業とは?

こちらは従前より実施されていた地域医療介護総合確保基金による「介護ロボット導入支援事業」と「ICT導入支援事業」が一体化され、本名称となり本年度に実施されることとなっています。
補助対象は「介護記録ソフト」「インカム」「介護ロボット」「タブレット機器(パソコンは除く)」などとなっています。

個々の申請要件については、おおよそ旧年通りとなっていますが、補助要件として「介護現場の生産性向上に係る環境づくり」について、「補助額上限1,000万円」「補助率3/4」が追加され、生産性向上推進体制加算(Ⅰ)の取得を目指す場合などに大きな役割となるかもしれません。
実施主体は各自治体となり、概ね6月~9月頃の申請開始が多いものと推察しています。

申請開始から締切まで日がない場合が多く、当該申請時期前に、具体的に機器選定をすすめるなど準備が必要です。
※事業名称、補助要件等は自治体により異なる場合があります。詳細は各自治体から公示された実施要項をご確認ください。

出展:令和5年度 全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料より
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001221553.pdf

 

エイジフレンドリー補助金とは?

高年齢労働者の労働災害防止対策、労働者の転倒や腰痛を防止するための取組など、主に職場環境改善目的として活用が可能です。
介護分野における具体的な活用事例としては、介護ロボット分野にある「移乗支援機器」などがあげられます。

補助上限額は100万円と変わらないものの、補助率が昨年の1/2から3/4に引き上げられています。
詳細は厚生労働省ホームページよりご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001158947.pdf

人材開発支援助成金とは?

昨今、加算取得に必要な研修実施や資格取得推進に対して介護事業者様の負担が大きいこともあり、ICT・介護ロボット機器等の直接の補助ではないのですがご紹介します。

本助成金の主旨として、「労働者の主体的なリスキリングを支援する中小企業への賃金助成の拡充等による企業における人材育成の促進」となっています。
介護事業者様におかれましては、職員様が労働時間内に必要な研修を受講すること=同時間で遺失した賃金を補助する目的と置き換えたほうがわかりやすいかもしれません。
職員様が受講する研修では、外部講師を招聘した場合の謝金などは事業収益から捻出している場合が多く、同助成金を活用することで、事業運営に欠かせない研修実施の負担を軽減することが可能となります。

研修コストを意識するあまり、内部スタッフで対応することでの人的負担や、増え続ける研修ニーズに対して有効に活用することが求められます。また介護実務に関する研修のみならず、「ICTリテラシー教育」などの研修テーマのニーズも増えてきています。

詳細は厚生労働省ホームページよりご確認ください。
https://carigaku.mhlw.go.jp/jyoseikin/?utm_source=yahoo&utm_medium=paidsearch&utm_campaign=jinkaikin_ys&yclid=YSS.1001291342.EAIaIQobChMIt-26ivWnhgMVhuwWBR1fAwZPEAAYASAAEgL2xfD_BwE

ネットワーク環境整備について

介護記録ソフト、見守り支援機器の多くはネットワーク環境が必須となっています。
現場で扱うICT機器が増えることで、従来の環境では対応が難しくなる場合もあります。介護テクノロジー導入支援事業では「Wi-Fi機器の購入設置」も補助対象となっています。
今後のICT機器導入を見据えて、ネットワーク環境の見直しも早めに進めるべきかもしれません。

失敗しない補助金活用とは

本年度の補助金・助成金について解説しましたが、本来の目的は「補助金を活用して機器を購入する」ことではなく「補助金を活用して生産性向上の取組を加速する」ことにあります。
特に各自治体でこれから始まる「介護テクノロジー導入支援事業」は申請開始から締切まで日がないことから「購入ありきでの機器選定」になってしまうと、本来の現場課題とのギャップが生まれ、せっかく機器を購入したにもかかわらず現場で活用が進まないケースも散見されます。

具体的な機器選定の前に、しっかり現場課題を整理する時間を確保することが秘訣と言えそうです。

 

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